IH熱処理によるソリューション事例

IH熱処理のエキスパートとしてつねにお客様の抱える技術的課題の解決に取り組んできた富士電子工業。
最近のソリューション事例をご紹介します。

事例4 歪みで公差に入らない

図1 応力集中図

応力集中図
寸法変化の要因は、様々です。

近年、部品に求められる精度は高度化しており、図面の公差もマイクロ(0.01mm)以下で指定されていることが珍しくありません。
寸法公差に入れることが命題となりますが、焼入を施すと寸法変化が多少なりとも必ず起こります。
様々な要因がありますが、大きくは下記の二つが挙げられます。

・残留応力解放による寸法変化
・組織が変態(構造の変化)することによる寸法変化

残留応力の解放ですが、ワークは焼入されるまでに様々な工程を経ています。
素材のビレットから始まり、引き抜きや鍛造、切削加工、タップ加工等、形が変わり、削り取られ、各所にストレス(応力)が蓄積されます。形状は保っているものの、拡がろうとする力、縮もうとする力、様々な方向に力が働いています。
この状態のワークを加熱すると、この熱によって応力解放され寸法が変化するのです。

図2 bcc,fcc構造

bcc,fcc構造

次に組織変態ですが、焼入のプロセスでは加熱温度により組織変態が起こります。
鉄鋼はA3点(911℃)を超えると、オーステナイト変態し、金属の原子構造が体心立方格子から面心立方格子へと変わります。図2の通り、構造の変化によって原子間の隙間が変化します。そしてオーステナイトを冷却すると、面心正方格子へまた組織構造が変わります。つまり、焼入中に金属表面は物理的に膨張→収縮することになります。
※膨張量は鋼中の炭素量に左右されます。
これらの要因が複雑に絡み合い、あるものは縮んだり、あるものは曲がったり、予想外の寸法変化を起こすことがあります。

研磨代を設けて最終工程で寸法を出してしまえば話は簡単ですが、研磨代が多いとそれだけ工数が増えますし、ローレットや微妙な角度が付いた面など、修正が困難なものもあります。 寸法変化の傾向を見て前補正をかけたとしても、素材の状態を毎回一定にしなければならず、変化幅が大きいとそれだけで公差をオーバーしてしまう場合があります。精密部品において歪を極小にすることは非常に大切と言えます。
また、無理に矯正すれば割れの危険性も出ますし、焼入で得た強度は間違いなく減少します。
このように、歪に対してはトータルプロセスでのコントロールが必要ですが、富士電子工業は様々な部品に対して歪量を最小限にする取り組み・開発を行っております。特に雰囲気処理から高周波焼入に工程変更する場合、大きな効果が見込めます。
歪で困りごとがあれば、是非ご相談下さい。

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